2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

四月二十七日

夜、ベランダに出ると、春の緑のむせるような匂い。涼しい風が吹いている。僕は五感でこの瞬間を味わう。体の奥から何かが込み上げてきて、目の下あたりがじんとする。生きたい、と僕は思う。世界は美しい、と思う。

四月七日

ポトフの匂いがした。どこから? 自分の体から。え!? たしかに昨夜はポトフ、3杯食べたよ。いや、でも。 いやな匂いじゃないよ、ポトフ。だけど、体から匂ってくるというのは、なんか、やっぱ、ちょっと、違うよね。 (2013.04.07)

四月五日

今日昼ご飯を食べに行ったHという店の白飯は美味しかった。家の近所のとんかつ屋の白飯を僕はいつも美味しいと思うのだが、今日のところもそこに次ぐくらいの美味しさだった。では、どこが美味しいのだろう。 感覚的には「かるみ」ということになる。米がべ…

四月三日

路地で僕は迷子だった。あの大きな爆発。目指していた塔は姿を消し、僕は目的地を見失った。がれき、傷を負った樹木、煤けた壁、べったりと塗りつけられた濃い青空。もう一度、もう一度、もう一度と虚しい祈りが口をつく。歩くよりほか僕には何もできなかっ…

『咲くやこの花――川柳秀句を味わう――』時実新子

時実新子氏の個人誌「川柳展望」から<前号十秀>として選出された句を時実氏の評とともに楽しめる。時実氏の評は鋭く、また文章の切れ味もよい。そういう意味では、これは時実氏の世界観を味わえる一冊でもある。彼女の、句に対する追体験能力の高さもさる…

四月一日

道路の両側の桜並木が満開。それは綺麗で空虚な景色。柔らかい日差し、カーステレオから思い出を呼び覚ます音楽が流れて、これ以上ないくらい薄っぺらな時間が過ぎていく。 誰かが変わらないことじゃなくて、自分が変わらないことに怒れよ。 そこに誰も座っ…

三月二十九日

僕の破片を 君が集めてくれた 君に出会って 僕は全体を取り戻した 君に出会って 僕はもう一度生まれた (2013.03.29)

三月二十七日

「ここに置いてあるの、君の?」 「いえ、僕が来たときにはもう置いてありました。その時、女の子が一人ここにいたけど、彼女のものかは分かりません」 「そう。今度その子に会ったら、私が呼んでたって言っておいて。四年前の続きのことがあるから」 (2013.…

三月二十五日

弁護士とその助手がとあるお金持ちの女性の相談を解決するために屋敷を訪ねた。 彼らは屋敷の庭へ案内され、広い牧場のような庭を見て回る。館内へ戻る間際、弁護士は木の柵の向こうに一匹の豚がいるのを発見した。彼が柵に近づくとピンクの丸々太った豚がや…

三月二十四日

月の光は闇と共にある。太陽の光が闇を払う光であるのに対して、月の光は闇の中で輝く。(2013.03.24)

三月二十三日

今日はカメラ片手に散歩してきました。 近頃は散歩もあまり楽しめず、今日もまた最初は興が乗らなかったのですが、歩いているうちにだんだん楽しくなりました。そんな気持に呼応するように天気もどんどん良くなりました。 写真を撮りながら歩く楽しみは、や…

三月二十二日

人間に祈りが必要なのは、人間が矛盾した生を生きているからだと思う。 一昨日からリップクリーム制限をしています。そんなわけでひび割れた大地と化したマイ唇。めくれる皮をむきたい衝動に耐えながら過ごしています。 人生で大切なものは?と聞かれたら、…

三月二十一日

昨夜の強烈な風が雨を引き連れた黒雲を吹き払ってしまった。眩しいくらいの青空。 こんにちは。 お元気ですか? 今日は突き抜けるような青空の下、僕はブルーな谷の底を散歩しています。 「たとえば人間・たとえば無限」 今から読み始めようとしている本の目…

三月二十日

明かりを消した暗い自室の椅子に座っていた。リビングには親戚が来ているようで、両親と話す声がする。僕たちは誰かを待っている。近いうち僕は女性と会うことになっていた。それは親には内緒だった。僕は久しぶりに自分の人生を生きている気がしていた。誰…

『グーテンベルクの鬚 活字とユートピア』大輪盛登

活字に携わった歴史上の人々を、著者の活字に対する愛情あふれる生き生きとした文章で紹介していて楽しい。紹介されている人物のそれぞれが魅力的だった。「なにか」に情熱を注ぐことのできる人生は美しい。 (2013.03.19)

三月十四日

最近は母が元気なので、僕のしていることは皿洗いぐらい。以前、今より家事をしていた時に思ったのは、人が生きるというのはいろんなものを汚すことなんだということ。服、食器、机の上、部屋。生活しているといろんなものが汚れ、散らかる。自分の外にある…

『ことばのびっくりばこ』村田栄一

もうこれは素晴らしい本。ぜひ手元に置いておいて、折に触れてページをめくり、本の中の子どもたちと一緒に言葉あそびの世界で遊びたい。僕がいつか置いてきたもの、今では作品を書くときにだけあらわれてくるような世界を身近に感じさせてくれる。 子どもた…

三月十二日

自分を否定するというのは以前考えていたよりもずるい行為なのかもしれない。そこには自分を見ているようで、実は自分から目を逸らす心理が働いているような気がした。 畳の部屋に母方の祖父母の遺影が飾ってある。のを見ながら、死ぬこと生きることの不思議…

三月十一日

この数日、何度か深い暗闇の底へ僕は沈んでいった。沈みながら僕は恐れを抱いた。と同時に、それとは別の意識はもっと深く沈もうとしていた。僕にははっきりと感じられた。この暗闇の底にはさらに深い闇が存在していると。(2013.03.11)

『うつ病を生き抜くために――夢と描画でたどる魂の癒し――』D・ローゼン

このユング派の大学教授の書いた本は、今の僕に大きな影響を与えた。 今、僕が直面している問題が深い過去の泉の底から浮上してきたのも、おそらく本書を読んだことと関係している。この本を読みながら、僕は自分の過去を見つめ、現在を見つめ、そして未来を…

三月十日

一人の男の、真っ白な腹が膨れて、弾けた。おびただしい血と奇怪な悪魔的な小動物(あるいは怪物)が飛び出した。あるものは羽を持ち、あるものは蜘蛛のような何本もの足を持ち、またあるものは口から牙をのぞかせていた。 男は草むらに倒れ、そこで息絶えた…

三月九日

暗くなり始めた夕暮。人ごみの中、僕は歩いていた。前には父が歩いている。しばらく歩いていくと、皆水路に入っていく。僕と父もそこに入ると、水の流れる滑り台みたいに水路に流されていった。水は、始めのうちしゃがむと頭が出るくらいだったが、徐々に深…

日記のこと

最近、このブログに書いているのは今から数年前の日記からの抜書きである。なんでこんなことをしているのかというと、ここに書いてしまって、それからもうこれらの日記は捨ててしまうつもりだから。何週間か前に部屋の大掃除をして、その一環でこれらの日記…

七月十三日

選挙で世の中が変わるなんて思わない。社会のあり方が変わった時に世の中は変わる。だから、世の中を変えたいなら、選挙に行くことが大切なのではなく、日頃から社会と自分との関わり方を一人一人が意識して、各々がそこに変化をもたらしていくこと。(2013.0…

『海の鳥・空の魚』鷺沢萌

さわやかになる話だったり、ほほえましい話だったり、少し苦みのある話だったり、といろいろな話ーー超短編といってもいいーーが収められている。 どんな話にせよ読んでいて気持がいい。それは、この作者の書く文章の気持よさだ。(2013.07.11)

『勝手に生きろ!』チャールズ・ブコウスキー

ろくでもない、そして情けない男の転職小説。翻訳のせいもあるとは思うが、文章は素っ気なく見方によって稚拙とさえいえる。ただし、そのことはマイナスになっているわけではない。その文章も含めてこの小説の面白さだろう。 ・・・浮浪者が一人、寄ってきた…

『歩く影たち』開高健

ベトナム体験を中心とした短編集。 僕はこの作家をなんとなく読まずにきたのだが、間違いだった。きちんとした文を書く人だし、描かれる人物も魅力的だ。(2013.07.08)

『十八歳、海へ』中上健次

中上健次は二冊目。僕はこの人の文章が好きだ。(2013.06.24)

六月二十四日

いつか出口のないように思えたこの部屋も、今ではドアを開ければ外の世界のある当たり前の部屋になった。ドアの向こうにあるのは沙漠でもジャングルの茂みでもなく平凡な日常である。(2013.06.24)

六月二十三日

過去を否定することは、とりも直さず自分を否定することである――高校生くらいの頃に買ったワイルドの『獄中記』の中にこんな一文があった。僕はそこに線を引いていた。すでにその頃から僕は過去を悔やんで生きていたのだった。その後、悔やまなくていいよう…