2020-01-01から1年間の記事一覧

一日の始まり

「この前、断捨離の番組をしててさ、」喬は妻の理子に以前見たテレビ番組の話をしていた。室内には冬の陽射しが明るく差しており、二人はそれぞれに朝の仕事をしながら話をしていた。 「で、断捨離を始めたら、」 「ね、ちょっと待って」 唐突に、理子が話を…

雑感

クリスマスもすっかり色褪せてしまった気がするのは、僕が大人になったせいか、時代のせいか。今という時代は全てのものが軽く表面的だ。深刻なことでさえ決して根源的にはならない。人は深く考えることを忘れてしまったみたいだ。

ちりあくた

僕が今日食べた豚肉の、豚の命はどこにある。僕が食べた一片の肉塊を構成する一つ一つが命だったのだろうか。それとも、その肉塊がかつて成していたひとつのまとまりが命だったのか。それとも命は肉そのものではなく、ただ肉に宿っていただけなのか。もし命…

泥中の泥

俺はナイフを握り、自分の心臓を何度も突いた。痛みが必要だった。言葉にすることのできない感情が目の奥に溢れ、流れない涙が目から流れた。俺は自分を侮蔑した。泥中の泥。己の欲望に目が眩み、人を憎み、恨み、呪った。渇いた笑いが喉に鳴る。俺の心は地…

冬の祈り

当然ながら冬は日が暮れるのが早い。ベランダに出ると肌に冬の空気があたる。それはとても軽やかだ。 四方を山に囲まれたこの小さな町の夜はそれほど暗くない。家々の灯り、コンビニや駅のホームの煌々とした明かりが透明な闇の底を照らしている。このちっぽ…

草や木を生かしている力は、僕を生かしている力である。それはまた天体を動かしている力でもある。この宇宙を運行させている力は、そのまま僕の中にも働いている。

日々

俺は本を読んでいた。女は夕飯を取りながらぺちゃくちゃと職場でのことを喋っていた。俺は話はほとんど聞かず時たま適当な相槌を入れた。飯を食い終えた女は俺に絡みついてきた。俺は本が読みたかった。しかし、もはやそれを続けるのは不可能だった。俺は女…

路地で

僕は立ち止まって世界を感じる。夜の始まりの細い路地のおもちゃ屋の軒でランプが煌々と光っている。どこかへ行く人、帰る人。人たちが通り過ぎていく。少し冷んやりとした空気。暖かな路地の雰囲気。心はどこまでも穏やかで、この世界と調和している。けれ…

月に触れた人の手から血が流れた。女は僕を抱いた。女は普段とはまるで違った目になって僕の肉体を貪った。閉め切った窓の隙間から夜が滲んでいた。

返事

駐車場に止めた車の中で男は力なく言った。 「神さま、なんで俺なんか生んだんや? 俺はなんで生まれなあかんかってん? 俺が生きてることにどんな意味があるねん? 俺は間違ってばっかりや。どうしようもなく弱い人間や。人さまに顔向けできひんような人間…

いつもいつも何を言い訳にしてきたの?

世界を? 時代を? 場所を? 親を? 兄弟を? 能力を? 性格を? 年齢を? 未熟さを? 成熟を?

鈍い魂

私は仕事を終えて、夜の空を見上げた。空は相変わらずきれいだった。10年前に見た空も、20年前に見た空もやはりきれいだった。ただ、少し、私が鈍感になっただけだ。

自分の原材料

あなたは何でできていますか?と聞かれたら、「100%煩悩です」混じりっけなしの煩悩人間。

生命

この命の先端で震え、生かされている自分、もはや自分でさえなく、ただ連綿と続いてきた生命の営みの最果て。闇雲に触手を伸ばし、世界を感知し、おのれを切り離し、ようやく手に入れたこの自分という不確かな存在を、曖昧な輪郭を、

変わらず存在していること

夜、涼しい風が滑り込んで、遠い昔に失ったはずの世界に対する優しい感情を連れてきてくれる。虫の声、世界は静かに安らいでいる。

自分のことは脇に置いて

今になって過去の自分の過ちを振り返れば、過ちを犯した時っていうのは、大体自分のことでいっぱいいっぱいになっている時だったなと思う。自分の辛さ、しんどさ、焦り、苦しさにとらわれて、それをなんとかしたい一心で、自分のことしか見えず、考えられず…

油断

自分がどうしようもある人間だと思うときに油断がある。

目に入るもの、耳に聞こえるもの、鼻に嗅ぐもの、肌に感じるもの、頭に浮かぶこと、一切が縁である。

思いはどこへ行く

思いってなんだろう。思いはどこから生まれて、どこに行くんだろう。

ジャッジする自分

自分の行動をジャッジするのをやめよう。他人をジャッジするのをやめよう。

美は曖昧なもので、単に美しい(とされている、または思われている)ものが美しいわけではなく、かといって醜い(とされている、または思わられている)ものが美しいわけでもない。

侵襲

美は至るところにあって、ぼくの心の間隙を突いてぼくの中に侵入してくる。それはいつも想像を超えたものであり、同時にどこにでも転がっているものである。

昼下がり

父の部屋に柔らかくて少し寂しげな光が差し込んでいる。光を孕んだカーテンが風にそっと揺れる。優しい時が流れる。世界の秘密がこぼれおちる。

歳を取るなんて、あっという間。10年も経てば、今のこともまだ若かったあの日なんて思い出すのかもしれない。永遠に過去は取り戻せない。犯してしまった罪。やり直すことのできない日々。祈りは誰に届くの。

愛ってなに

愛が大切なんだって分かってる。愛が尊いものだって分かってる。だけど、愛ってなに? それは知識じゃない。自分の中から湧き上がってくるもの。頭で理解するんじゃなくて、感じられるもの。愛があるなあと思う人を見ていて、そう思う。でも、今の僕にはそれ…

7月5日

午後3時。外の公園で遊ぶ子どもたちの声。気持ちのよい風が廊下を通り抜けてくる。世界はいろいろな波に覆われている。美しい波、醜い波、優しい波、憎しみの波、平和な波、争いの波。清濁併せた波が僕らを取り巻いている。その波の嵐の中にあって、それで…

6月30日

争いによって何を手に入れるの? 勝って得るものはなに? みんなが思いやりの心を持てば世界に平和はすぐにも訪れるはずなのに。僕たち人間はどうしてこんなに愚かなの? 人を見下したり馬鹿にする言葉や憎しみ合う言葉がなければいいのにね。みんなが助け合…

6月28日

都合のいいことに感謝。都合の悪いことに感謝。

6月28日

できることに感謝。できないことに感謝。

夢の中でその人に会った。それは、ほんのちょっとの間のことだった。その人と僕はちょうどサヨナラをする時だった。僕たちはサヨナラをして、僕はその人に少し触れた。その時、僕はその人にほんとうに触れた。不思議な気がした。目が覚めても、僕の手はその…