2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

心の向かうところ

1 男は神も仏も信じられなかった。それは結局体験するものであり、いくら知識を詰め込んだところで理解できるものでも信じられるものでもなかった。もし知識だけで信じるならば、それは盲信というものだろう。男は神や仏を有難いものだとは思ったが、それに…

人生

僕たちはあらかじめ決められた台本を演じている役者である。けれど、自分が役者だということを知らない役者である。

行い

ゆずる、起きやんと、という正徳の声に目を覚ました譲は、時計を見て自分がずいぶんと眠っていたことを知った。自分が思っている以上に疲れが溜まっていたのかもしれない。 譲は最近、神仏にはまっている。久しぶりの休みである今日は神像の展覧会を見に行く…

朝風呂

シャワーの湯が背中を流れていく。皮膚が湯の熱を感じる。体を伝う液体の感じ。床に触れている足裏の感触。風呂椅子に触れている尻の感覚。膝に置いている肘の圧力。右腕と左手の拳の接触面の温もり。体表を撫ででいく湯気。床に弾ける水滴の様々な音。まだ…

1月16日

自分で考えることにはどうしても自分の欲望が混じっている。だから、自分で考えたことなんかにあんまり囚われちゃいけない。人間なんてどうしたって自分が可愛いんだから。物事は自ずから進むに任せるのが一番間違いない。

薄っぺらの善

悪なら手軽に深みを手に入れられる。悪はとても人間的なものだから。悪はそれ自体誘惑的である。対して、善によって深みを手に入れることはとても難しい。善を語る言葉は大抵薄っぺらい。彼らのほとんどは愛だの平和だのを謳いながら、その実自らの欲望の充…

1月10日

母から急な頼まれごとをして車を出す。道中、母と喋りながら目的地の文化施設に着く。 母が用事を済ますのを車中で待っていたところ、母から電話。文化施設で、これからコンサートが開かれることを知り、それを聴くことにしたが、あなたはどうするか、と。自…