三月二十日

  明かりを消した暗い自室の椅子に座っていた。リビングには親戚が来ているようで、両親と話す声がする。僕たちは誰かを待っている。近いうち僕は女性と会うことになっていた。それは親には内緒だった。僕は久しぶりに自分の人生を生きている気がしていた。誰かが来た。いとこだった。僕の部屋のドアは開いていた。僕はドアと反対側にある窓の外の夜に目をやった。暗闇、電車に乗っている自分、後ろめたさと高揚感、自信と恥じらい、期待と不安、純粋さと欲望。オレンジ色の電灯に照らされた廊下からいとこが僕の名前を読んだ。(2013.03.20)