朝の通勤。俺は車を走らせていた。久しぶりに朝から日差しの強い日だった。信号待ちで並んだ車の列に俺も並ぶ。左手にある運送会社の倉庫前の空き地で中年男が何やら作業をしている。男は光を浴びながら黙々と作業している。俺は美しいと思った。その男がど…
気づくのではなく、気づかされている。思うのではなく、思わされている。
ある事柄に接して私は感情を体験するが、その感情は私のものであって私のものでない。
夜明け前、目が覚めて、ぼんやりと天井を眺めていた。時々、その天井をカーテンの隙間から入ってきた光が、カーテンの隙間の形をした細長い光が移動していく。外を走る車のライトの光がどういう反射でか、そんなふうに室内に入ってくるらしかった。今、この…
つらいならつらいまんまのなむあみだ 愚かなら愚かなまんまのなむあみだ 苦しいなら苦しいまんまのなむあみだ 悲しいなら悲しいまんまのなむあみだ
硯の陸に水を垂らし、墨を磨る。その静かなはたらき。墨と硯とこすれあう。快いわけでもなく、不快でもない、そのあわいの。透き通っていた水が、だんだんと重い粘り気のある液体へと変わっていく。
生まれるのも死ぬのも自然の営みの一つの過程である。生命の始まりも終わりも僕には知る由もない。
この間、とある寺の秘仏・秘宝特別開帳で念仏の鬼という絵を見たのだが、これは大津絵の鬼の念仏を描いたものだった。ここに描かれた鬼とはまさに私のことであって、本来の鬼の念仏はどうも偽善者のことを言い表すようなのだが、もちろん私は偽善者であるし…
突き詰めて考えれば人間が存在する理由は息をすることなのだ。呼吸。それ以外の生きる目的はすべて副次的なものに過ぎない。生きているということは息をしていることであり、死んでいるというのは息をしていないことである。すべての人は息をしていることに…
頭が痛い。肩が凝っている。怒り、憎しみ、恨み。醜い上にさらに醜さを塗り重ねて生きていくのか。
今日また僕は自分の中の地獄を生きた。僕の心。それは全くもって地獄の景色に他ならない。僕は自分の一生を通じて地獄巡りをしている。
ほとんど何も、それどころか何ひとつ、どんなささいな事でさえ自分自身にできることはない。
かなり偏っている。いちご、ブルーベリー、バジル、人参、パイナップル、キウイ、キャベツ… これらの野菜や果実を毎日のように食べている。特に今はいちごをその旬が過ぎ去るのを惜しむようにせっせと食べている。
こんなにも明るい陽ざし悲しくてあかりを消して過ごす休日 人よりもできない自分見つけては自分嫌いになる仕事の日 この心ずっと続けばいいのにと思うそばから愚かな心 ほんとうはあなたに笑ってほしいのに少しもうまくいかないデート 稲妻に打たれたように…
朝から明るくて暖かい陽ざしが嬉しい。これだけのことでどれだけ今僕の心は救われているだろう。 同じように落ち込んでいても、明るい陽ざしがこんなふうに嬉しい日もあれば、反対に悲しくなってしまう日もある。
宇宙の始まりとともに始まり、宇宙の終わりとともに終わる。
大体おかしい。
現実は夢そのものである。
真夜中、目の前の高層ビルは音もなく崩れ去り、あとにはただ鬱蒼と茂る原始の森が広がっている。酔っ払った醜い脳髄は世界の平和を祈り、原始の森に埋め込まれたいくつもの灯りの下で、僕は自らの汚れた命に嘔吐する。
俺も君も死に向かって疾走している。宇宙的時間の中で人間の一生は一瞬光芒を放って消える流れ星のようなものだ。
今日あんたが目に見せてくださった諸々に感謝しよう。耳に聞かせてくださった諸々に感謝しよう。鼻に嗅がせてくださった諸々に感謝しよう。舌に味わわせてくださった諸々に感謝しよう。皮膚に感じさせてくださった諸々に感謝しよう。心に浮かばせてくださっ…
自分という憑き物がとれて初めてぼくたちは平和な状態を経験することができるのだろう。
ぼくは言葉を待っていた。言葉が降りてくるのを。これからだってそうだろう。
すべて「わたし」の力では何事もなし得ないと知ること。生きていることそれ自体が既に「わたし」の力ではないのだから。
期待は裏切られる。しかもそのことによってわたしたちは救われている。
起こることはただ起こるべくして起こっている。もし神の計画というものがあるとしたら、それはつまりそういうことだろう。ところが僕という人間は愚かだから、起こっていることが自分にとって都合のよいものならよしとし、都合が悪いならおかしいと考える。…