『ピエロよ永遠に』

 『ピエロよ永遠に』(岡部文明)は読んでいて僕を懐かしくさせる本だった。中学生の頃抱いていた、ここより他にもっと素敵な世界がある、そこに自分も行きたい、という思いを、思い出させてくれる本だった。だから、その頃読むことができればもっと良かったかもしれない。うまくいかず、自分でもどうしていいか分からなかった現実の中にいた僕をずいぶん勇気づけてくれただろう。

 今の僕はこの本を読んでそんな気持のあったことを思い出す。思い出すほどに僕からそんな気持は遠ざかってしまった。どこへ行ったって同じだ、という思いが、今僕をこの場所に縛り付けているのかもしれない。夢さえ抱けないほど生活に埋没しているのかもしれない。夢がほんとうに夢であったような頃を思い出しながら、そんなふうに思う。(2011.08.14)