五月十三日

この世的に健康になるほど、魂は死んでる。

 

病院かもしれないし屋敷かもしれないしあるいはまったく別のなにかだったかもしれない僕はその何階かに秘密の場所を持っていたそれだった初めて明かされたのだがそこにいとこのHが入っていきというよりは落ち込んでいきというのもその部屋というより空間は布的な空間でありあるいは胎内的空間だった僕の一階下のその部屋の真下に位置する浴室長い脱衣場のある浴室でどういうわけか服を脱ぐのに恐ろしく手間どりようやくジーンズを脱いだところでその声自分の名前を呼ぶその声を聞いたのだったHはいまにも窒息しかかっているようだったあの柔らかい空間で僕は急いで部屋を出ようとしてそれでもジーンズは履いていこうとしたのだがさっき脱いだばかりのジーンズがどこにも見つからずようやく見つけた緑のジャージがあったがそれは履かずに下着で部屋を出た最初僕にはその階が分からなかった僕は二階上へ行ってしまいそこで医者かぎりなく医者だと思われた人物に死にかけている人がいる旨伝えその階を探してくれと言ったのだがその後で一階下にいるはずだと考えて階段を下った僕が階段を下り終えたところでさっきの医者がちょうど下の階から上がってきた僕たちは今秘密の場所の前で鉢合わせた入口をめくると下のほうでもごもごと動くものがあったどうやらHは無事らしい医者がさっさとHのもとへ駆け下りていった。

 

遠い昨日の昼、スーパーへと車を走らせていた。M台を上る道路の先にメタセコイアの何本か植えられた一角がある。僕はこの尖塔のような姿の木が(特に裸の頃に)好きだ(と思う)。今はその木にも緑の葉が育ちその葉に陽光がちらりちらり反射していた。僕はカーブを曲がらずにその煌めきの中に突っ込んでいきたい気がした。

 

真夜中の道路に転がっている空き缶の涼しい存在感。

 

中身を失ったジュース缶は美しい。それはもう必要とされていないから。

(2013.05.13)