四月十八日

 昨晩、ベランダに出た母が「もう蛙が鳴いてる」と言った。「ほんとや」

 そして、ふと思った。僕は蛙の声を母に言われるしばらく前にも意識していた。おぼろげに蛙の鳴き声が聞こえているなあと。それは言語化されることなく、耳が(あるいは脳が)とらえていた。けれど、その時テレビを見ていた僕はしばらくするとそんなことはすっかり忘れていた。

 もし、あの時、母が蛙の声にもう一度気づかせてくれなければ、きっと僕はその夜、蛙の鳴き声を聞いたことを知らないままだっただろう。(2013.04.18)