四月十日

 近所の寺の裏山を登ると、てっぺんに木に囲まれて少し開けた芝の広場がある。広場には忠魂碑というでっかい石の碑が立っている。おそらくめったに誰も来ないだろうし、一人になりたいときにはいい場所だ。そこに名前は知らないけれど若芽をたくさんつけた木がぽつりぽつりあった。こげ茶色の枝から濃い鮮やかな緑の芽が出ている。触ってみて驚いた。柔らかい。ぼくは芽というのはもっと硬いものだと思っていた。それは柔らかくて瑞々しかった。木の根元にしゃがむと、コモリグモが二匹、さささっと根元に積もった枯葉の上を走っていく。二匹ともお腹が白い。卵だ。(やがて母のお腹の上で孵った卵からはたくさんの子グモが出てくる。子グモたちはしばらくそのまま母グモのお腹にくっついて過ごす。)そんな季節なんだ。新しい命の生まれる季節。(2011.04.10)