2019-04-09から1日間の記事一覧

『気分爽快! 身体革命』伊藤昇

胴体の動きは3つだけ、という視点は面白い。そのそれぞれ(①伸ばす・縮める②丸める・反る③捻る)を調整する3つの体操も分かりやすい。これなら続けられそうだ。 また、この本を読んで身体を理論的に学ぶことへの興味もわずかながら覚えた。(2013.05.07)

五月四日

薄暗くなり始めた部屋の壁に血が流れ、灰色の空は寂しく窓ガラスに貼りついている。窓の外には、あるはずのないレンガ色の大学の校舎があり、図書館の入り口前の広場を歩いている僕がいる。植え込みの樹の葉が無音で揺らめいている。(2013.05.04)

五月二日

その口は嘘と混乱に満ち、目ははるか遠く人間不在の世界へそそがれ、耳は宇宙の物音に傾けられている。 眠っていた、僕を、窓の外から、青いお空が、のぞいてた。 (2013.05.02)

『稲垣足穂』ちくま日本文学全集

「一千一秒物語」は洒落ていて、こういうのを書く作家が日本にもいたってことが嬉しい。ただ、文章が読みにくいところがあるのか、短い作品にもかかわらずなかなか前に進まなかった。 この本には、「一千一秒物語」以外にも短編小説、日記(発表されたものだ…

五月一日

緑は時に僕の心を圧迫するほどに繁茂し始めている。 奈良散策。 葛木神社には思いがけなく出くわした。住宅街の細い路地に面している。よく手入れされているようで、すっきりとした神社だ。 そこから少し歩いて鏡玉神社。さらにしばらく行くと瓢箪山古墳があ…

四月三十日

僕の人生ときたら甘酸っぱくもなければほろ苦くもない。焼きサンマのはらわたみたいな苦さだ。(2013.04.30)

四月二十九日

いいことの中にわるいことが混じっているし、わるいことの中にいいことが混じっている。 僕は何度か日本のお城を見たことがあるが、それに感心したことがない。なんというか日本のお城はちゃちである。 (2013.04.29)

四月二十八日

古い町並の残る路地を歩いている僕に、「さよなら」と細くて高い声が飛んできた。振り返ると路地の脇にレンガが積み重ねられていた。 一番深い平面。 (2013.04.28)

四月二十七日

階段の途中から見上げた十一面観音はすらりと美しかった。ハッとさせるところがあった。実際、観音堂の中に入ってから見た十一面観音は、さきほど見上げたときとは少し違っていたが、なるほどなと思わせる美しさだった。 堂内部で最も心惹かれたのは、十一面…

四月二十五日

K川の土手を歩いた。シャガやタンポポやその他の可憐な花が緑を彩っている。僕はカメラを手にしていた。 河原恵比寿神社は静かだった。木の葉のざわめきや鳥の羽ばたきや遠くから聞こえる自動車の走行音、カラスの一声、風。(2013.04.25)

四月二十三日

胸に手を当てて死んでいる人。灰色のコンクリートの冷たい感触。 雨。路面に黒い染みが点々とつき、やがて島になり、最後には全てを埋め尽くしていしまう。 思考を書くときに感じるうっとうしさは、思考なんてものが嘘にすぎないことに起因する。 (2013.04.2…

四月二十一日

人々の眠りがあんまりやかましいので、ついに僕も眠るより仕方なかった。本も読めなければ、音楽にだって集中できない。その上、彼らが目覚める気配は微塵もなかった。(2013.04.21)

四月十九日

僕は怠惰な巡礼者だった。これからもそうに違いない。僕の道中は休息と寄り道の連続だ。そうであれば、死ぬまでに聖地を拝むことはかなわないかもしれない。 けれど、寄り道の先々で僕は聖地の噂を耳にする。休息の眠りの中にまだ見ぬ聖地の幻を夢見ている。…

四月十八日

昨晩、ベランダに出た母が「もう蛙が鳴いてる」と言った。「ほんとや」 そして、ふと思った。僕は蛙の声を母に言われるしばらく前にも意識していた。おぼろげに蛙の鳴き声が聞こえているなあと。それは言語化されることなく、耳が(あるいは脳が)とらえてい…

『古美術幻妖』宗左近

著者が所有する古美術について書いた本。 一つ一つの章を古美術の説明としてではなく、短編小説として読むと、とても味わいが増す。(2013.04.16)