七月十七日

 暗い廊下の側壁にぼんやりとした光がドアのガラスを通って貼り付いている。輪郭のあやふやな腕の影が光の中に長く伸びる。君にさよならをいうべきじゃなかったと僕は思う。部屋は静かすぎる。暴力さえ眠ってしまったかのように。

 

 風に揺られて木々の葉がこすれ合いさざめいている。僕にはこんな密集は耐えられそうもない。林の木の群集の中に立ちながらそんなことを思っている。ぼんやりと眺めているあいだにも木々のおしゃべりは続き、夏の午後はゆっくりと過ぎていく。

(2012.07.17)