入江泰吉写真展「花」

 見てよかった作品展だった。スマホでも手軽に写真が撮れる時代。素人だっていい写真を撮っている人はたくさんいる。そんな中で見た入江泰吉の「花」の写真展。そこには美しいだけでも、綺麗なだけでも、上手なだけでも、面白いだけでも、センスがいいだけでもない写真があった。接写された花の写真や、花のある風景写真には日常の中にあって日常を超えた力があった。僕にとって芸術は現実を超えたものだ。それは現実の中にあって非現実的なもの。入江泰吉の花の写真は現実の花や風景を映しながら、写真という技術を用いて現実(日常)を超えた映像を作りだしていた。彼の作品には突飛なものは少しもない。それだけにかえって丁寧に目の前にある物や景色の中に潜む非日常性(人間的・生活的な見方から離れたもの)を掬い取っていると感じた。