『町にきたドラゴンたち』ジャネット・マクネイル

 以前読んだ同じ作者の作品集『はじめてのおてつだい』も面白かったけど、この本はとてもすてきだ。不思議なことがごく当たり前のことのように書かれているところがいいなあ。僕も物語を書くことがあるけれど似たような作風だと思う。「町にきたドラゴンたち」「はりきりポスト」「妖精アンディ」の三つの話の収められたこの本。どの作品もそれぞれに面白かった。

 「町にきたドラゴンたち」の中に”自分も生きよ、他も生かせ”というセリフがある。自分たちの論理だけで他を追い出さないこと。他が生きて、自分も生きてくるというメッセージがドラゴンたちと人間たちの物語を通して伝わってくる。ドラゴンが人間の町を丘から見下ろすシーンや、こどもドラゴンが夜の町で遊びまわるときの描写が好き。

 「はりきりポスト」は、町にきた新しいポストが自分のいるべき場所を見つけるお話。はりきって動き回るポストが楽しい。

 「妖精アンディ」は・・・僕はこのお話が大好きだ。クリスマスに賑わうデパート、サンタクロース、妖精、そして魔法。日常の中にささやかな不思議が紛れ込んで、あたりまえの世界がちょっと素敵な世界に変化する。僕が”詩”を感じるのはそんな瞬間だ。

(2012.06.19)