永らく忘れていた道を僕は歩いた。僕が歩いたのはいつも夜だった。外に出るとそこはいつも夜だったから。遠くに白く光る街灯が見え、僕はそれを目標に暗い道を歩いた。何度も角を曲がった。やがて街灯のことは忘れられた。

 その夜、僕は何度も吐いた。嘔吐の後で涙が流れた。涙は欺瞞に満ちているので、嘔吐より前に流れはしない。(2010.11)