自分

 どこから書けばいいのか、また、どんなふうに書けばいいのかも分からない。

 僕は愚かな人間である。今の自分から過去の自分に言いたいことがあるとすれば、「もっと現実的になれ」ということだろうか。もちろん、それは今だから分かることであって、過去の自分には分かる由もない。それに、若い一時期に夢を見て過ごすことは必ずしも悪いことばかりではない。けれども、僕自身に関していえば、そのことであまりにも大きな代償を払うことになった。夢ばかり見ていた僕は、現実問題にはまるで無力で無責任な人間だった。もっとも夢を見ている人間がみなそうなのではなく、僕においてはそうなったというだけのことだ。僕は人には厳しく自分には甘い、つまり自分というものがまるで見えていない愚か者だった。そして、僕は身近な人を深く傷つけた。その傷の深さは僕には分かり得ようもない。僕は自分のしている行為が、どんなに人を傷つけるのかにも気づくこともできない人間だった。それどころか、気づいてからでさえまともにそのことと向き合うすべを知らない人間だった。僕は夢ばかり見て、現実に生きていく上で人として身につけなければならない責任感も想像力も欠いた人間になってしまっていた。僕のしたことは取り返しのつかないことだ。もしも死後に地獄があるのなら僕は間違いなく地獄行きだろうし、今後どんな報いがあったとて仕方のないことだ。これを書いている今も、僕は軽薄な人間であり、また自らの感情や欲に振り回されてしまう弱い人間である。救いようのない馬鹿だ。やめよう。こうした自己非難は書けば書くほど空々しくなるものだ。自分を責めることで、心の安寧を図るのである。これからどうしていけばいいのかは分からない。けれども、夢に逃げるのではなく自分の置かれた現実にまともに対処していく必要があることだけは分かっている。