かまきり

 今や、僕にとっての文学は、父にとっての司法書士のようなものだ。僕は父に向かって言う。司法書士は諦めてなにか他のことをすれば? 誰かに対して言ったことはみな自分に跳ね返ってくる。というか、本当は自分に言っているのかもしれない。

 

 散歩の途中、道の上にかまきりを見つけた。ひどく弱っている。しゃがんで見ると、頭と手を負傷していた。車に跳ねられでもしたのだろう。もう何年もかまきりを触ったことはなかったが、なんとなく放っておけず、そっと首を掴むと道の脇の草むらへ移動させた。そんなことをしても、もう長くはないと思いつつ。弱り切ったかまきりは、過ぎ去っていく夏を思わせた。(2011.10.08)