『エルフたちの午後』ジャネット・テーラー・ライル

 読み始めたとき予想したよりもずっと複雑で重い結末だった。僕はこのひそやかな雰囲気をまとった物語がエルフという存在を通して二人の少女が心を通い合わせていく物語だと最初思ったのだ。けれど、二人の関係はそう単純ではない。見ようによっては少し前に話題になっていた女性芸能人と彼女をマインドコントロールしている自称霊能者との関係は、この物語の二人の少女の関係とどうようだといえる。二人の関係は単純に善だとも悪だともいえない。もちろん、この小説の要素はそれだけではない。ヒラリーという少女の最初の自立・成長の物語でもあるし、人々がいかに先入観を持って物事を見ているかを指摘する物語でもある。そしてサラケートという様々な事情によって世間から見捨てられ傷ついた子どもの物語でもある。彼女にとってエルフの村に対しているときだけが子どもでいられる時間だったのだ。(2012.03.23)