礒江毅展

 奈良県立美術館へ礒江毅展を見に行った。面白い作品もいくつかあったけれど図録を買うまでではなかった。80年代後半あたり(90年前後)と2000年以降の作品に特に惹かれた。

 90年前後の作品には青春の面影を感じた。未熟さゆえに生み出せる作品があると思う。それはオリジナリティを獲得しているとはいえないけれど、個を超えた場所で魅力を有している。

 90年代の作品は全体的に僕には平板に感じた。

 それが2000年くらいの作品からは、だんだんと描かれている物に迫力が出てくるようなところがあった。単なる写実を超えて創造された世界(空間)を感じた。

 人物よりは静物に面白いものが多かった。人物では手がよかった。

 

 美術館を出てから、奈良公園を歩いた。大学の頃、美術館に来た際に、そうしていたように。けれど、何もかも違ってしまった。もちろん心の問題だ。

 二月堂へも行った。昔よく父と弟と早朝散歩に来た場所。もう親と出かけるような歳ではなかったにもかかわらず、子ども時代に戻ったように過ごせるその時間が好きだった。けれど今日、やっぱりもうそんな気持には戻れなかった。(2011.10.26)