四月二十七日

 階段の途中から見上げた十一面観音はすらりと美しかった。ハッとさせるところがあった。実際、観音堂の中に入ってから見た十一面観音は、さきほど見上げたときとは少し違っていたが、なるほどなと思わせる美しさだった。

 堂内部で最も心惹かれたのは、十一面観音の光背の朱拓で、壁にかかったその抽象画めいた朱拓は部屋全体に神秘的な空気を与えていた。(聖林寺

 

 長谷寺は大きな寺だ。そして気持がよい。観光客相手の店が並ぶ門前町の通りを歩き、寺の入り口についた時のその感じがよかった。そして長い階段を上るにつれひんやりしてくる空気。その冷気は不思議と寒さを感じさせない。

 長谷寺の観音は大きい。どこか教祖めいたカリスマ性のある顔をしている。その分、胡散臭さを感じさせる顔でもある。

(2013.04.27)