映画「マチネの終わりに」

生きるって何だろう。

これまで読んだ本の中にその答えが書かれていた気もするけど、そのどれも読んだ時にはそんな気になったにせよ、腑には落ちなかったんだろう、僕は覚えていない。

僕にも幸福を感じる時はある。今日だって出かける時にマンションの入り口のそばに立っている葉を落とした木を見た時には、その佇まいになんとなく幸福を感じた。けれど、それは一瞬の事で次の瞬間にはもう言葉が僕の中に湧いてきて幸福を見失ってしまった。僕の感じる幸福はあまりにも一瞬で限定的で、それ以外の時間との差を考えればどうしたって釣り合わない気がする。僕は人間的な交わりの中に幸福を感じることがほとんどない。だからといって孤独を求めているわけではなく、誰か一緒にいて安らげる人がいるならそんなに良いことはないと思う。けれども現実には人といれば疲れるばかりだ。きっと僕は人間向きではないんだろうな。

 

映画「マチネの終わりに」は、通俗的な物語を通俗的に撮った映画だと思った。それにしても、残酷なすれ違いだ。携帯電話がある時代にあんな事ってあるだろうか。そうなるのが幸せだったかはともかく、あの時なんとかならなかったのかと思う。