ベランダで

 夜、ベランダに出て、頭を空っぽにしてみる。つまり、いつも忙しく頭の中を飛び交っている言葉をひととき追い出してみる。そうすると、世界をとても直接に味わっているように感じる。いつも僕の加える調味料――思い出や感傷などなくても世界は十分に美しい。きれいな町灯り、夜の静けさ、心地いい風、美しい虫の音色、空間の広がり。

 書くときはともかく、感じるときは世界と自分との間に言葉をはさみたくない。

(2011.08.04)