生々しいのか過剰なのか

 映画が始まってすぐに、映像の明度というのか彩度というのか何と言っていいのか分からないが、映像の明暗の具合が自分にしっくりこないと感じた。暗い画面の中でアジア系少年が白人青年の顔に白いクリームを塗っている。青年の表情から感情は読み取れない。青年の肉体は鍛え上げられている。少年が青年の裸の肩をたたいたり、背中をこすったりする。試合前の控室なのだ。続いて、リング上での格闘シーン。目まぐるしく動く映像と見ている自分の脳に不快を与えるほどの殴り合いの音。おそらくそこで俺の体はもうしんどくなっていた。

 その後、主人公が夜の盛り場をふらつくシーン、翌日なのか部屋にいるところを警察に襲われて逮捕されるシーン、そこから刑務所でのやりとり。猥雑で騒々しい映像に俺は映像酔いしていた。そして刑務所の中で新入りの囚人が古参の囚人たちに犯されるシーンで俺はじっとしているのがしんどくなり息が苦しくなった。悪寒と吐き気に襲われてシアタールームを出た。すぐさま、トイレに向かったが上からは何も出ず、代わりに下から立派なものが出た。

 俺は再び『暁に祈れ』に戻ることなくビルを後にした。気分はだいぶすっきりしたが、人々の群れの中では平衡感覚が乱れた。