六月十七日

 

 あの日々の気持を今の僕はもう正確には思い出せない。どんなふうに孤独だったか、どんなふうに同世代や大人たちを憎み嫌ったか、どんなふうに夢見たか。

 仕方のないことだ。人は過去に生きてはいられないから。

 

 どうしようもなく変わってしまうこと。僕が「僕」だと考えていたものも結局は状況の産物だったのか。

 

 声が聞こえる。とても、近くから。静かにそっと降る雪みたいに。

 

映画『NINE』

(2013.06.17)