『ビルギット』グートルン・メブス

 姉であるビルギットは癌に侵されていた。そのことがわかってから一変した家族の姿を、まだ癌や死を大人のようには理解していない主人公の目を通して描いている。

 ここにはまだ癌や死を「こういうもの」と頭で知っていない子どもの見方がある。それは時として大人をイライラさせられたりすることかもしれない。けれど、きっとありのままをみているのはこの主人公のほうだろう。だからといって、それがいいとかそういうことでもない。やがて、主人公が姉の死をもっと別のかたちで受け止めるようになるとしたら、その時彼女はどんなふうに傷つき、どんなふうにそれを乗り越えていくことができるだろう。(2012.05.06)