秋の速度で

 塔の内部には秋がたちこめている。反射光。ガソリンスタンド。有給休暇。瞬きする速度で聴こえる。緊縮財政。時間に遅れることが蜂蜜のように打つ。ずっと昔の涙を踏みつけて灰色の青に揺れる香りを列車の轟音が運び去る。砂浜に波が打ち寄せる。石垣の上に咲いた耳をかじり、出入りする空気を媒介する乾電池。トースターの音を聞きつけた鼻。滴る目。(2010)