六月一日

 静かに深く呼吸を乱して。

 

 その日僕は天使だった。病気持ちで、堕落して、情けない天使だった。

 

 正しい人になる努力はすべきだが、正しい人になったつもりにはなってはならない。

 

 ある朝、一人の中年男が寝起きの大あくびをしたところ、その口から緑の鳥が飛びだした。窓には虹が映っていた。色彩すべてに優しさをまとわせる朝日の差し込んだ部屋の中で、男は今、美しい絵の中の美しい登場人物だった。

(2013.06.01)