『ヴァレンタインズ』オラフ・オラフソン

    一月から十二月までをタイトルにした十二の短編からなる恋愛小説集。恋愛小説といっても、ここに描かれているカップルたちは幸せなカップルではない。ここにあるのはすべて痛みを伴った愛の物語である。物語は静かな緊張を湛えながら破局へと進んでいく。人と人の分かり合えなさ、すれ違い、人間のどうしようもない愚かさ、そんなものに覚えのある人なら楽しめるんじゃないだろうか。

    文章はあくまで静かである。繊細な工芸作品といった短編集だ。