『はじめてのおてつだい』ジャネット・マクネイル

 「メアリーとかさの木よう日」と「ちいさいおてつだいさん」の二編からなっている。

 「メアリーとかさの木よう日」・・・まずタイトルが好き。夕飯をお世話になるエミリー大おばさんが風邪をひいてしまったのでメアリーは大おばさんの代わりに買い物に行くことにする。雨が降っていたので、柄にアヒルの顔がついた傘を持って。雨はすぐに止んで使わない傘が邪魔になったメアリーは、それを「わざとうっかり」忘れようとするけれどうまくいかない。その上、柄のアヒルはウィンクしたりする不思議なやつで。アヒルの傘が気に入らいないメアリーだけど、買い物の途中で遭遇する問題をアヒルと一緒に乗り越えていくことで最後にはちょっとした信頼感も生まれている。

 メアリーとアヒルが単に仲良しじゃないことで生まれる面白さがあった。メアリーは少し自分勝手にも見えるけど、メアリーが抱くような気持は自分にもあるし、そういう気持に素直なところがかえってメアリーの子どもらしい自由さを表現しているようにも感じた。キャロライン・ダイナンの挿絵も素敵だ。

 「ちいさなおてつだいさん」・・・隣人の老夫婦の家へおてつだいに行ったマッジだけど、自分の家とは勝手が違って失敗ばかり。読んでいてハラハラするけれど、どこまでも優しいハンブルおばあさんに関心。こんな大人がいてくれることは子どもにとっては大事。こちらの挿絵(ジェイン・ペイトン)は僕には少し陰気すぎるように思われた。

 二作品とも文体が好きだし、表現も素敵だった。訳者の松野正子氏による「時刻」と「時間」に関するあとがきも味わいがある。(2012.05.31)